ドバイの不動産が注目される理由 ―― 利回り・居住権・税制の三点セット

世界中の投資家がドバイへ向かう理由は、単純な値上がり期待だけではない。利回り・居住権・税制という三つが、一件の購入で同時に手に入る——その設計にある。外国人が指定フリーホールドエリアで100%の所有権を持てる点も、この市場の前提として押さえておきたい。

ドバイ不動産の利回りとキャピタルゲイン。2026年の水準

基礎工事が進む現場。2026年は12万戸規模の引き渡しが重なり、供給の計画そのものが価格を左右する

ドバイの住宅平均グロス利回りは6%台後半で推移している。2026年7月時点で全体6.58%、アパートメントは約6.9%、ヴィラは4.5%前後(Engel & Völkers調べ)。エリア差は大きく、ディスカバリー・ガーデンズやインターナショナル・シティといった手頃な価格帯では8〜9%の想定利回りも出ている。ロンドンやニューヨークの2〜4%と比べれば、賃料収入だけで成立する市場といえるだろう。

一方、値上がり益には冷静さが必要。2022年以降の価格上昇は約6割に達したが、2026年は12万戸規模の引き渡しが重なり、伸びは減速。上半期の取引件数は前年同期比13.8%減、通年の価格見通しも3〜5%程度に落ち着いた。米格付け大手のフィッチ・レーティングスは、供給増を理由に最大15%の価格調整もあり得ると見る。市場全体の追い風で勝てた時期は終わり、「どこを買うか」が結果を分ける段階に入っている。

ゴールデンビザと不動産投資家ビザ。2026年の緩和内容

ビジネスベイのマリーナ越しに望む高層住宅群。利回り・居住権・税制の三つが同時に動く市場

制度面は2026年に大きく緩んだ。10年のゴールデンビザは物件評価額200万AEDが基準で、複数物件の合算も可能。2月にはローン物件に課されていた頭金50%要件が撤廃されている。滞在義務がなく、家族の帯同もできる点が使いやすい。

さらに4月、2年の不動産投資家ビザで単独所有者の最低価格75万AEDが廃止された(共有名義は1人あたり40万AED以上が必要)。スタジオ1戸からでも居住権に手が届く形。ただし、こちらは完成済み・タイトルディード発行済みの物件が条件で、オフプランは対象外となる。

ドバイの税制。個人に所得税・キャピタルゲイン税・固定資産税なし

建設中の物件。取得時にはDLD登録料4%を含め、購入価格の7〜8%程度の諸費用がかかる

個人に所得税・キャピタルゲイン税・固定資産税はない。9%の法人税は法人やライセンス事業者が対象で、個人名義の賃貸収入は原則として範囲外となる。実際に発生するのは、取得時のDLD登録料4%(諸費用込みで購入価格の7〜8%)、賃料相当額の5%にあたる住宅料金、そして毎年のサービスチャージ。住宅の売買・賃貸にVATはかからないが、商業物件には5%が課される。

ただし、日本の居住者であれば、賃料も売却益も日本で課税される。ドバイの非課税は「日本の税金が消える」わけではない。ここは必ず税理士に確認しておきたい。

制度設計として見るドバイ不動産市場

ビジネスベイの開発区画。完成済み物件を単独で所有していれば、価格を問わず2年ビザの対象となる

低い視点で見れば、以上は利回りと制度要件の一覧に過ぎない。高い視点で見れば、これは人口と資本を呼び込むために国家が意図的に設計した制度セットであり、政策が変われば条件も動く。緩和が続く今は好機であると同時に、制度に依存した投資でもある。そう捉えたうえで、物件そのものの立地と管理品質を見極めたい。

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